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氷ノ山登山体験レポート
「氷ノ山(ひょうのせん)」は、鳥取県若桜町と兵庫県養父市との県境にそびえる山です。標高1510mで、中国地方では大山に次いで2番目の高さを誇ります。その登山コースは変化に富み、愛好家の方に大人気。5月下旬~11月中旬のシーズン中は多くの登山客でにぎわいます。
私たちナオミ・マドカの同級生コンビは、自然に恵まれた鳥取市在住。幼い頃から山や海で遊んではいたけど、登山経験は全くなし。だけど、女子の間でも人気が高まっている登山やトレッキングには、二人とも以前から興味を持っていたんです。
最近ちょっぴり運動不足ぎみだし、「よし、この夏は“山ガール”デビューしよう!」と一大決心。その最初の一歩として、一番身近な山である氷ノ山にチャレンジすることにしました!
高原の宿 氷太くん
澄んだ青空がどこまでも広がる7月のある日、私たちはまず「氷ノ山高原の宿 氷太くん」に向かいました。なんせ登山は初めての私たち。右も左も分からない状態なので、登山の受付先である氷太くんを通じて「山のガイドさん」をお願いしたんです。
氷太くん前で、ガイドの森岡さんと待ち合わせ。ガイド歴18年の大ベテランで、年間100回以上は氷ノ山に登っているとか。す、すごい!
初めての山ガールファッションがぎこちない私たち(笑)
それに対して森岡さんは「山男」風でバッチリ!
ビギナー丸出しの私たちとは違い、かっこいいハット、装備がいっぱい詰まったバックパック、熊鈴の付いた木のつえという登山スタイルで、ビシッと決まっています。すごく頼れる感じ!優しい口調でにこやかに挨拶してくださったので、私たちはすぐに意気投合。楽しい登山になりそうです♪
早速、氷ノ山キャンプ場にある「氷ノ越(ひょうのごえ)登山道」の入口へ向かいました。氷ノ山には、「氷ノ越コース」「仙谷(せんだに)コース」「三ノ丸コース」の3つの登山コースがあるそうですが、初めてなら「氷ノ越コース」がオススメとのこと。景色を楽しみながら、約2時間半かけてゆっくり登りましょう、ということになりました。
出発前に持ち物や装備、登山の注意事項を確認。山の天気は変わりやすいので、夏場の晴天時でも雨具や防寒着などは必ず必要とのこと。また、熊鈴やラジオなど音が鳴るものも必須。そして、登山道を外れない、植物を持ち帰らない、自分が出したゴミは必ず持って帰るなど、基本的なことを教えていただきました。
暑さのことも考えて早めの午前8時30分に登山開始! まずは標高1250mにある「氷ノ山越避難小屋」を目指します。
熊防止(!)の電気柵を越えると、日常とはかけ離れた自然の世界が待っていました。どちらを向いても緑・緑・緑。「林業が盛んだった頃に植林されたもの」という杉林が、空に向かって真っ直ぐ伸びています。その枝が夏の日差しをさえぎり、まだ朝の冷たい空気が残っています。
遠くで、せせらぎのザーッという流音が響いています。虫の声や鳥のさえずりも。なんだか心がホッとして、“森に抱かれている”気分に。
可憐な白い花が咲くというサンカヨウの茂み。
初登山の私たちには、何もかもが珍しい!
森岡さんがふいに立ち止まり、道の斜面に茂る大きな葉っぱの植物を指さします。「これは、氷ノ山を代表する植物のサンカヨウだよ」と説明してくれました。5月下旬に白い花が咲き、夏にはブルーベリーのような紫の実がなるそうです。でも、その実を鹿が食べてしまうんだとか。「ここまで鹿が来るの!?」と私たちはビックリ!
幸い(?)この日は動物に出会うことはありませんでしたが、熊や鹿はもちろん、天然記念物のイヌワシやヤマネも棲息する氷ノ山。あふれんばかりの自然が私たちの故郷にはまだちゃんと残っているんだなぁ、と感動しました。
柔らかい土の道がだんだんと石の道に変化。足下に気を付けながら登っていくと、歩きやすい石畳が現れました。道標には「旧・伊勢道」の文字が。
今も残る旧・伊勢道の石畳。
ここを通る人たちを何百年も見守っているんですね。
私たちが今歩いている道は、江戸時代、お伊勢参りへと向かう人たちが通った道だったんです。人や馬が通りやすいようにと敷かれた石畳が、今もここだけ残っているんだとか。この上をたくさんの人が、様々な思いを抱えながら歩んだのだなぁと思うと、なんだかノスタルジックな気持ちになりました。
峠を越えて伊勢まで歩いて行くなんて、昔の人は本当に健脚。私たちも負けないぞ!
そろそろ休憩したいなと思っていた時、せせらぎの音が近くなっていることに気付きました。すると、「ここでひと息つきましょう」と森岡さん。その言葉を待ってました(笑)。
目の前にはきれいな水が流れる沢が。ひと休みにはもってこいのポイントです。この水は、氷ノ山の銘水「氷山命水」の源泉から流れてくるものだとか。手を浸けてみると、冷たくて気持ちイイ~! 夏でもこんなに流れが冷たいなんて、さすが“氷の山”です。
標高が高くなるにつれて、樹木の種類が徐々に変化。これまでは杉の人工林がメインだったけど、ブナなどの自然林が多くなって“森”の雰囲気がアップ。そして、トンボの数もだんだん多くなってきました。「トンボも涼しい所が好きなんだね」と森岡さん。動植物たちは標高や周囲の変化を敏感に感じ取って、賢く生きているんですね。
突然、道端に何かを発見して森岡さんが手を伸ばしました。何だろうと思っていると、「においをかいでみて」と小枝を差し出されました。クンクン、とてもさっぱりした香りがします。 一体何の木?
この木は「クロモジ(黒文字)」。お茶席で和菓子を頂く時の楊枝に使われたりする木です。若い枝の表面に黒い斑紋が出ることからその名が付いたとか。黒文字の楊枝のことは知っていたけど、木そのものを見たのも、香りをかいだのも初めて。う~ん、勉強になることがいっぱいです。
歩き始めて約1時間、ようやく「氷ノ山越避難小屋」に到着しました!青空に三角屋根を伸ばす避難小屋を見てちょっぴりホッ。まだ頂上じゃないけど、プチ達成感♪
無事に登頂できますように…かなりガチでお地蔵様にお願い。
ここは、兵庫県側から登るコースとの合流地点でもあります。その一角には、お伊勢参りの安全を祈願したお地蔵様が。今は登山客を優しく見守っています。私たちも道中の安全を願ってお地蔵様に手を合わせました。
まだ豆粒大の山頂避難小屋を前に、途方に暮れる私たち(笑)。でも、夏の青空が応援してくれているからガンバルゾ。
そのお地蔵様が見つめる先に、氷ノ山の頂上があります。「あれが山頂の山小屋だよ」と森岡さんが指さす地点は、まだはるか遠く! 二人がく然としていると、すかさずフォロー。「遠くに見えるけど、尾根を歩くからそれほどでもないよ(笑)」。ホントかな~?
頂上まであと1.5km。傾斜がきつくなってくるけど、気を取り直して再出発です!
避難小屋を出てすぐ、ブナの原生林に出会いました。枝を大きく広げる広葉樹のブナは、とても力強くて神秘的。「ブナは水を蓄える力が強いから“山のダム”といわれているんだよ」と森岡さんが教えてくれました。太い幹に生命力を感じます。
原生林にたたずんでいると、ふいに「コココココッ!」という軽快な音が。キツツキが木を突いている音です!TVで聞いたことはあるけど、生の音は初めてで大感動!! 早起きした甲斐がありました。
そして、ブナの木から網の目のように伸びる根っこを踏みしめながら、さらに上へと向かいます。
ふかふかした土の道をはじめ、氷ノ山の登山道はバラエティーに富んでいます。きちんと整えられた木道もありますが、ほとんどが自然の道。大きな岩がゴロゴロ転がっている所もあれば、先程のように木の根っこが作り上げた自然の階段も。
登山ブームも手伝って木材を敷いた登山道が増える中、こうした自然道がメインの氷ノ山は、日本中の山を登ってきたベテラン愛好家の方にとても好まれている、といいます。
面白い形の
ヤマジノホトトギス
可憐な「ツルリンドウ」
自然の山道を歩くのはとても大変です。だけど、変化があるからこそ楽しいし、なにより“大地を踏みしめて歩いている”という充実感があります。私たちもだんだん慣れてきて、登山が楽しくなってきました。
また、氷ノ山は山野草の宝庫。頂上までの道のりでは、可憐な花や高山でしか見られない植物に出会うことができました。
花びらに紫の斑点がある「ヤマジノホトトギス」、小さな紫色の花が可憐な「ツルリンドウ」は、見逃してしまいそうなほどひっそり道端に咲いていました。花弁も小さく、決して自己主張してこないんだけど、凜とした美しさがあります。
季節が変わればまた違う山野草が見られることでしょう。春先や初秋の氷ノ山にはどんな花が咲くのかなと、興味が湧いてきました。
徐々に頂上に近づいてきました。高い樹木が減って視界が開けてきたので後ろを振り向くと、氷ノ山の南側にそびえる「鉢伏山」が! その見事なパノラマに、足の疲れが吹っ飛びました。
そして進行方向には山頂の山小屋が。氷ノ山越避難小屋で見た時よりも随分大きく見えています。よし、もう少し。険しい道もなんのその。素晴らしい眺望に後押しされながら、歩を進めます。
頂上の直前は角度の急な階段で先が見えず、どこまで登ればゴールなのか分からなかったけど、先導の森岡さんが振り向いて拍手で迎えてくれたので、頂上に着いたんだと分かりました。
出発から約2時間半、標高1510mの氷ノ山山頂をついに制覇しました。ヤッター!!
山頂には、見渡す限り360度の大パノラマが広がっていました。この日はちょっとかすんでいて、遠くまではっきり見ることができなかったけど、これが、登り切った人だけが味わえる景色なんですね~。
そして、私たちの登頂を祝福するかのように出迎えてくれたものがもう一つ。それは、緑がかった薄い青色の羽を持つ蝶です。
旅する蝶「アサギマダラ」。
山頂に咲く花にとまり、蜜を吸っていました。
「これは『アサギマダラ』という蝶で、何千kmも旅をする蝶なんだよ」と森岡さん。後で調べてみると、日本列島を縦断し、遠く沖縄や台湾まで飛んでいくこともあるとか。
名前のとおり透き通るような浅葱色で、まるで宝石のようにキレイ。昆虫は苦手だけど、このアサギマダラには二人ともすっかり魅せられました。
ひとしきり登頂の達成感を味わったら、急におなかがすいてきました。お楽しみのランチは、氷太くんで購入した「おにぎり弁当(525円)」。絶景パノラマとアサギマダラの舞いを眺めながら青天で食べるおにぎりは最高! あっという間に食べちゃった(笑)。
山頂に1時間ほど滞在した後、いよいよ下山。後ろ髪を引かれながら、来た道を慎重に下ります。「下山のほうが楽でしょ」と思っていたけど、出発してすぐに足が笑いだしました(汗)。太ももも、ふくらはぎもプルプル! 下りのほうが足への負担が大きいんですね。侮っていました…。
途中休憩を何度か入れつつ、1時間半ほどで出発地点の氷ノ山キャンプ場に到着。ケガもなく、無事に全行程を終えることができました。
ガイドの森岡さんに案内していただいたおかげで、登山に最低限必要な装備や服装、山でのエチケットはもちろん、氷ノ山の見どころをたくさん知ることができ、最高の山ガールデビューとなりました。これを機会に、また登山に挑戦したいと思います。
氷ノ山は、登山経験の少ない人もベテランの方も存分に楽しめる山です。自然豊かなので、山野草好きの方にもオススメ。皆さんもぜひ氷ノ山に登ってみてください!
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